勝手知ったる!(2人台本)
●台本をご使用の際は、利用規約をご一読下さい。
●ページトップの画像は、ツイキャスで生声劇する際のキャス画にお使い頂いても構いません。(配役等の文字入れ可)
【男女比率 1:1】
【所要時間:25分程度】
【人物紹介】
・瀬名 侑吾 (せなゆうご)♂
社会人をやりながら劇団にも所属している。
芽衣子とは大学の演劇サークルからの付き合い。
・月本 芽衣子(つきもとめいこ)♀
普段は事務員。侑吾と同じ社会人劇団の脚本を書いている。
いつでもネタを探している。
↓生声劇等でご使用の際の張り付け用
――――――――
『勝手知ったる!』
作:レイフロ
侑吾:
芽衣子:
https://reifuro12daihon.amebaownd.com/posts/56232182
――――――――
以下、台本です。
(玄関の扉がそっと開く)
侑吾:
え…?玄関、開いてる…?
芽衣子ー?入るぞー?!
芽衣子:(苦しそうに)
はぁ…はぁ…
侑吾:
芽衣子!どうした?!大丈夫か?!
芽衣子:(演技がかって)
侑、吾…っ私としたことがっ…油断、した…
侑吾:
はぁ(ため息)
またお前はそうやって…
芽衣子:(小声で)
侑吾は、私と同じ部隊に所属してる同僚で、幼なじみの役ねっ!
侑吾:
はいはい…。
ふぅ…(一息ついてから役に入る)
誰にやられた!
芽衣子:
気を、つけて…裏切り者は…私たちのすぐ、近くに…
うっ…ガクッ…
侑吾:
芽衣子―!!
ちくしょう…!必ずかたきは取ってやるからなぁぁ!
芽衣子:
はいカット、ダメー。
侑吾:
ダメ?!
芽衣子:
そこはさ!死んだ私を抱きしめながら涙ながらにこう言うのよ!
「芽衣子…実はお前のことずっと好きだったんだ…こんなことなら、早くこの想いを伝えていればよかった…」って。
侑吾:
それはベタすぎるだろ。
芽衣子:
かたきは取ってやるからなー!の方がめちゃくちゃベタでしょお?!
侑吾:
つかお前、こんな茶番をやるために俺を呼び出したのか?!
芽衣子:
茶番とは何よ!
次の舞台の脚本はSFもいいかなって思ったのー。
侑吾:
我らが貧乏社会人劇団に、そんな凝った準備が要りそうな舞台、出来ると思うのかよ?
芽衣子:
無理に決まってんでしょ?!
侑吾:
逆ギレ?!
芽衣子:
はぁ…萎えた。侑吾じゃ臨場感出んわ。
侑吾:
こっちは急いできたんだぞ?!
お前が突然「タスケテ…」なんてメッセージ送ってくるから!
芽衣子:
いーや遅かった!
こっちは30分くらい倒れたフリしてたっつーの。
侑吾:
どんだけ勝手なんだよ!
しかも鍵も開いてて危ないだろ?!
芽衣子:
倒れてる設定だったんだから開けとかなきゃアンタ入れないでしょ?!
侑吾:
いやいや、不用心すぎ!ひとり暮らしなんだから少しは気をつけ…
芽衣子:
大丈夫。ほら、ベランダにカモフラでブリーフ干してるから。
侑吾:
ブリーフって!!
芽衣子:
あ、侑吾はトランクス派?それかボクサーパンツ派?
ピッタリする方がやっぱいいの?ぶらぶらするより。
侑吾:
まじでお前終わってんな!
芽衣子:
今さら可愛い子ぶる必要ある?
侑吾:
親しき仲にも礼儀ありって言葉知らないんですかぁ?
つかもうビール開けてんじゃん。それ何食ってんの?
芽衣子:
ニンニクチップス。
侑吾:
はぁ…仮にも男が来るっていうのにニンニクチップスですか。
しかも「ガッツリ最強ニンニク」って書いてありますが?
芽衣子:
なによ。私とチューしたかったわけ?
いいよー、フレンチキス1回5千円ね?
むちゅむちゅむちゅううう(唇を突き出す)
侑吾:
色気ゼロかっ!!
はぁぁぁ(ため息)爪の先でも心配した俺がバカでしたよ。
芽衣子:
暴漢が来たって私みたいな干物女は襲われませんよーだ。
クソがよ!
侑吾:
口わるすぎな!
芽衣子:
あ、ブリーフが嘘くさいならさ、リアリティ出すために
侑吾のパンツちょーだいよ、ベランダに干しとくから。
侑吾:
だからそういうことを恥ずかしげもなく言うな!
今のご時世、「女子だから」「男子だから」言っちゃダメみたいなのはねーけど、
それでも結構アウトだからな?!
芽衣子:
はいはいわかりましたよー。
おパンツ下さいお願いしますぅ。
侑吾:
丁寧に言えってことじゃないですぅ!!
芽衣子:
侑吾は相変わらずだねー。
硬いっていうか、根が細かいっていうか。
侑吾:
俺が細かいこととは何ら関係ありませんー。
親しき仲にもモラハラは適用されるからな?!
芽衣子:
へいへい、わーかりましたよぉ。
いいからほら、早く座りなさい!
シッダウン!(sit down)
侑吾:
俺は犬か!
で?まじで何の用だったんだよ。
芽衣子:
聞いてよ、まじで酷いんだよぉ!
侑吾:
まさかまた例のインテリ眼鏡の課長さんの話か~?
芽衣子:
「課長」じゃなくて「マネージャー」ね!
侑吾:
なにそれ。じゃあ「部長」は?
芽衣子:
部長は部長。
侑吾:
なんでだよ!
芽衣子:
こっちが聞きたいよ!
侑吾:
そういや最近オフィスも固定席をやめて「フリーアドレスオフィス」になったんだろ?
どこに座って仕事してもいいですよーみたいな。
芽衣子:
そ。オシャレにすることばっか力入れててまじキモイ。
侑吾:
オシャレにしたいならなんで部長の呼び方は「部長」のままなんだよ。
芽衣子:
知らないよぉ。
まぁそれはいいんだけど、ほれ、まずは乾杯!
侑吾:
ゴクゴク…あ、もう飲んでたわ。
芽衣子:
なんでよ!乾杯しないで飲むとか頭おかしいんかっ!
侑吾:
すっごい棚上げ!お前は俺が来る前に飲んでたけどな!
で、インテリ眼鏡の話はどうなった?
芽衣子:
そうそう!私がいつものごとく録音聞きながら会議の議事録書いてたらね?
それはあとでいいからこっちやってくれって言うわけ!
侑吾:
別の仕事を差し込まれたわけだな。
芽衣子:
だからそっちやったじゃんよ?
そしたら午後になって、議事録はまだかって言ってきて。
侑吾:
おぉ…それはシンプルにうざいなー。
芽衣子:
あいつの脳みそ、ゼリーと入れ替えたろかぃ!
侑吾:
あはは!そんでぐちゃぐちゃに掻き混ぜてストローでチューチューしてやろうぜ!
芽衣子:
いやちょっとそれは…
侑吾:
なんで引くんだよ!そこはノってくるところだろ?!
芽衣子:
侑吾んとこはそういうムカつく上司いないの?
侑吾:
まぁいるにはいるけど、脳みそをゼリーと入れ替えるほどではないかなぁ。
芽衣子:
可愛い新入社員とかも入ってこないの?
全然浮いた話聞かんからお母さん心配ですぅ。
侑吾:
誰が俺のおかんだ。
芽衣子:
こっちはねぇ…
んふ、んふんふんふ~
侑吾:
気持ち悪!なんだよ、イケメンでも入ってきた?
芽衣子:
そういうわけじゃないんだけどぉぉ??
侑吾:
クネクネすな、ビールこぼれるぞ?
芽衣子:
松浦くんって子がね、ちょっと可愛いんだよねぇ。
侑吾:
マツウラくんねぇ。
芽衣子:
そ!なんかまだ社会に揉まれる前っていうかさ、擦(す)れてないんだよね~。
侑吾:
へぇ、どんな風に?
芽衣子:
こんな資料誰が見んねん!みたいな資料も、形式上作らなきゃいけなくて、
そういうのは事務員の私がやってくれるもんだとみんな思ってて…
いやむしろ自動で出てくるもんだとでも思われてるかも。
侑吾:
あー。そういう細かいことは事務の人がやってくれてるって忘れがちだよなぁ。
芽衣子:
でしょお?で、その松浦くんに「資料格納しておきました」って定型文を
個別チャットに書き込んだのね?
侑吾:
ふんふん
芽衣子:
そしたらさ、「月本さん、いつもありがとうございます!助かります!」って返信きて。
侑吾:
あ~。それは擦(す)れてないなぁ。ピュアピュアだなぁ。
芽衣子:
他の人は下手したら返信すら来ないのに、ちょっとときめいちゃったよねー!
侑吾:
不意打ちくらったわけだ。そのマツウラくんに。
芽衣子:
そう!顔はまぁ中の中で「ザ・普通」なんだけど、
だんだん可愛く見えてきちゃって~
侑吾:
いやお前ちょろすぎだろ。
芽衣子:
そんなことないもん!
侑吾:
でもさ、そのマツウラくん、実は年上キラーなのかもよ?
そのピュアピュアな返信もぜーんぶ計算づくでさ、
ホントは獣のごとくお前のことを虎視眈々と狙ってるのかもしれないぞー?
芽衣子:(まんざらでもない感じで)
バカじゃないのそんなわけないでしょおおお(侑吾の肩を思いっきり叩く)
侑吾:
いっっって!!
ゴリラに叩かれたのかと思ったわ…
芽衣子:
あっ、やきとりの缶詰あるんだった!
塩とタレどっちがいい?
侑吾:
塩ー。
芽衣子:
タレの方が美味しいのに。
侑吾:
じゃあタレだけ買っとけばいいだろ?
なんで塩も買ったんだよ。
芽衣子:
どうせうちでまた宅飲みすると思って。
侑吾、この間塩味食べてたから買っといたの。
侑吾:
お、おう…さんきゅ。
芽衣子:
今キュンときた?!ねぇきた?!ねぇ!!
侑吾:
だぁぁ!うるせーなぁ、このよっぱらい!
芽衣子:
いいから塩ダレの焼き鳥食べんしゃい?侑吾くん好きじゃろ?
侑吾:
あはは、俺のばぁちゃんの言い方ー!
芽衣子:
おばあちゃん元気ー?
あれから会ってないからさぁ。
侑吾:
あー。俺ん家で宅飲みしてた時に、急にばぁちゃんが訪ねてきた事件な!
あれはビビったよなー。
芽衣子:
結局最後まで彼女じゃないって信じてくれなかったよねー?
侑吾:
たまに突飛なことするんだよ。母さんから俺が一人暮らししたって聞いて、
心配で様子見に来るとか…。
ばぁちゃんの中で俺はずっと小さい子供のままなんだろうな。
芽衣子:
うちはもうじいちゃんもばあちゃんも死んじゃったからそういうの羨ましいよ。
侑吾:
最近は会えてないけど、この間ビデオ通話はしたよ。
相変わらず色々心配してた。
芽衣子:
彼女も元気だって言っといてくれたー?
侑吾:
誰が彼女だ!
お前にはマツウラくんがいるだろー?
芽衣子:
バッカ!松浦くんはまだそんなんじゃないんだからね!
侑吾:
バーカバーカ
芽衣子:
なによぉ!
そもそも無駄な資料とかもっと減らしてくれたら、
こんな簡単にキュンなんてしなかったわけなんだから、全部会社が悪いの!
侑吾:
まぁ結果的にその資料見なかったとしても、何かあった時にないと問題になる資料ってあるからなぁ。
芽衣子:
うるせぇ黙れ!会社の犬がよぉ!
侑吾:
はぁ…マツウラくんに聞かせてやりたいよ。
芽衣子は普段こんな口調なんですよーって。
芽衣子:
残念でしたぁ!会社ではおしとやかで通ってますぅぅ!
侑吾:
猫かぶってんじゃねぇか。
芽衣子:
えぇえぇ、すっぽりと被っておりますにゃあ?
侑吾:
そんな酔っぱらって赤くなった顔で上目遣いされても萌えませんー。
芽衣子:
チィッ!
侑吾:
舌打ちはやめなさい。
芽衣子:
ゴクゴク…ぷはあっ!!
侑吾:
可愛げの欠片もねぇな
芽衣子:
余計なお世話ですぅ
侑吾:
あ、そうだ。
俺がインテリ眼鏡のマネージャーやるから、即興付き合えよ。
芽衣子:
えー。私は劇団の脚本家であって、演者じゃないんですけどぉ
侑吾:
いいからいいから。
こういうのも次の脚本のヒントになるかもしれないだろ?
芽衣子:
まぁいいけど。
私は「社内イチ可愛い」で有名な事務員の芽衣子さんの役でいいんでしょ?
侑吾:
だいぶ尾ひれがついてるがいいだろう。
俺はマネージャー役な。インテリ眼鏡・瀬名マネージャー!
芽衣子:
はいはい。
侑吾:
オケ!じゃあ俺からいくぞ?
はい、アクション!(手をたたく)
――――――
侑吾:
くそぉっ!早く機密文書をアップロードしなければ、
地球が…地球が滅亡してしまう!
「コードネーム1938562789572021」!(←数字通りイチキュウサンハチ…と読んで下さい)
応答せよ!機密文書はまだかっ!
芽衣子:
私のコードネーム長っ!!
ま、まだ作成には時間が必要です!
侑吾:
地球の存亡がかかっているんだ!早くしろ!
芽衣子:
もう少し待ってください!
侑吾:
コードネーム19385?6?…あれなんだっけ?
んあー…なんちゃらかんちゃら!
芽衣子:
忘れてんじゃねーよ!
侑吾:
ちくしょう…!お前がモタモタしてるから追手が来やがった!
芽衣子:
瀬名マネージャー?!
まさか私のために時間を稼いでくれるんですか?!
侑吾:
お前のためじゃない。地球のためだ。
とはいえ、それを完成させられるのはお前しかいないからな…。
俺はマネージャーとして、やれることをやるだけだ。
芽衣子:
そんな!危険ですっ!早くそこから離脱してください!
侑吾:
コードネームなんちゃらかんちゃら。聞け。
芽衣子:
ついに数字1個も出てこなくなってるし…
侑吾:
ぐわあっ!
芽衣子:
どうしたんですかマネージャー!!
侑吾:
うぎゃー!
芽衣子:
マネージャー?
侑吾:
ひぎょぺぃ!
芽衣子:
マ、マネージャー??
侑吾:(殴られてる感じで)
いま俺、拷問受けてるから!!敵から拷問受けてるからっ!!
早く機密文書を!あぷっ!ろぉぉぉ!どぉぉぉ!
芽衣子:
拷問?!
…いいぞ!誰だか知らんがもっとやれ!!
侑吾:
ふふふ、上司が拷問されているのに喜ぶとは…
ついに尻尾を出したな!この裏切り者め!
芽衣子:
なっ!?
侑吾:
拷問は裏切り者をあぶり出す演技だったのだ!
ぐふふ、こんな古典的な罠にひっかりおって…お主もまだまだよのぉ。
芽衣子:
急激なお代官様感!
し、信じて下さい!私はただお代官様に拷問にあって欲しかっただけで!
裏切り者ではないのです!
侑吾:
なお悪いわ!!
えぇい!裏切り者でないなら早く機密文書を作れぃ!
…ん?お前は、マツウラ?
なぜお前がここに……ぐわあっ!!
芽衣子:
え~また拷問のフリですかー?クドいんすけど。
裏切者は私じゃないって言って…
侑吾:
ち、ちが…ほんとに!ぴぎょ!マツウラから!ぐへあ!拷問受けてるから!ぴぃぃ!
芽衣子:
まさか、裏切り者はマツウラくん?!
いいぞもっとやれ!!
侑吾:
お前まじ許さんからなぁ!
あっ…も、もうや、やめぇ…っ!///
芽衣子:
どんな拷問受けてるんですか!?
BL…まさかの年下攻めのオジサン受け?!はぁはぁ!アリかもぉぉ!!
侑吾:
お前全然機密文書作んねぇなぁ!!!
…待て、マツウラ!バーン!ぐわぁ撃たれたぁぁ!!
芽衣子:
マネージャアアアア!!
侑吾:
掠(かす)った、だけだ…心配、するな…
芽衣子:
なんだ掠っただけか。チッ。
侑吾:
お前めっちゃ俺のこと嫌いじゃん!!
はぁはぁ…マツウラのやつ、俺を撃った時、辛そうな顔してやがった…
もしかしたらまだ迷っているのかもしれん…お前が、アイツを救ってやれ…
芽衣子:
そんな!瀬名マネージャー!
死なないで下さいっ!
侑吾:
後は…頼んだ、ぞ…
芽衣子:
ジャーマネェェェ!!
侑吾:
「ジャーマネ」は…ダサい…ガクッ!(死)
芽衣子:
くぅ!!アイツらめ!絶対に許さない!
私の機密文書作成能力を舐めんなよ!
カタカタカタカタ…エンターキー!ターン!(強めに押す音)
侑吾:(機械音声)
地球滅亡マデ、アト、10秒。カウントダウンヲ、開始シマス。
テン、ナイン、エイト、シックス…間違エタ!セブン…ファイブ、シックス、セブン…あれ?
芽衣子:
カウントダウンがアホな間に、よし!完成!
アップロード、間に合えぇぇぇぇ!!!
侑吾:(機械音声)
アップロードエラー!アップロードエラー!
芽衣子:
あれ?!なんでぇ?!
侑吾:(機械音声)
スリー、ツー、
芽衣子:
あ、シンプルにPCフリーズしてる…
侑吾:(機械音声)
ワン…
芽衣子:
やっべ。
――――――
侑吾:
はい、ゲームオーバー!あははは!
芽衣子:
ちょっとぉぉ!失敗してんじゃないのよぉ!
侑吾:
そう簡単に地球を救えると思うなよ!
芽衣子:
機密文書アップして救われる地球ってなんなのよ。
侑吾:
はは、さすがに設定壮大すぎたか。
芽衣子:
もう疲れたぁ。ハイボール作って~濃いめで。
侑吾:
俺が作んの?!
芽衣子:
ハイボールくらい作れなくて営業マンがどうします!
侑吾:
いや、今どき「飲みニケーション」とか流行らないから!
芽衣子:
私とのコミュニケーションを測る上では大事なの!
侑吾:
はいはい、女王様~。
芽衣子:
なんだかんだ言いながら作ってくれるとこ好きー。
侑吾:
ほんっと調子いいなお前。
へいお待ちー
芽衣子:
ありがとー
侑吾:
そういえばさ。木崎、劇団やめるかもって。
芽衣子:
え?!そうなの?!
侑吾:
うん。なんか昇進するらしくてさ、責任ある役職だから暇なくなるって。
芽衣子:
そっか…。侑吾もさ、もし同じことになったら劇団やめるの?
侑吾:
俺?俺は別に役職に付きたいとかないし、
今の職業は芝居続けるためにわりと自由の利くとこ選んだからなぁ。
芽衣子:
木崎くんだって芝居続けたいって言ってたのに結局仕事を取るわけでしょ?
なんかそれって…もやもやする…。
侑吾:
その程度の情熱だったのかって思いたくなる気持ちもわかるけどさ。
でも、芝居よりも仕事を取ることと、木崎が今まで頑張って劇団続けてきたことは
また別の話だと思う。
芽衣子:
……。
侑吾:
例えば自分が演じたい役があって、でも実際にもらえた役は
エキストラに毛が生えたような端役だったとするじゃん?
自分で選ぶ権利がない下っ端の頃ならそれでもありがたく役をもらって一生懸命演じる。
でも自分が役を選べるような立場になった時、自らそんな端役を選ぶかな?
芽衣子:
何がいいたいの?
侑吾:
何を選択するかって、その人が今どの立場、どの状況にいるかで変わるんだよ。
ずっと同じじゃいられない。
芽衣子:
それはそうだけどさ…
侑吾:
社会人劇団は特にプロを目指してない人も多いし、情熱の度合いは色々だけど、
うちの劇団はチケットのノルマもあるし、セットや衣装も手作りして負担もデカい上に、公演してもほぼ利益はない。
遊びの延長線くらいの情熱じゃ続けらんないことくらいお前だってわかってるだろ?
芽衣子:
……。
侑吾:
沢山考えたと思うよ。
その結果出した答えだったら、俺は木崎のこと、応援したい。
芽衣子:
…うん。
侑吾:
お前だってこうやって人数がしょっちゅう変動するのに
それに合わせて脚本書いてくれてるだろ?ほんとありがたいし凄いよ。
芽衣子:
私は別に好きなように書いてるだけだし…
侑吾:
俺は好きだよ。
芽衣子:
えっ?!
侑吾:
お前の脚本。
芽衣子:
え…あーうん、脚本、ね。
侑吾:
我らが社会人劇団の脚本家様には、
演者一同、本当に感謝しておりますよー
芽衣子:
ふふ、なにそれ。
大いに崇め奉り申し上げ奉り給え!
侑吾:
奉りすぎな?
もう飲みすぎだからこれはお預け。
芽衣子:
ああ!私のハイボールぅぅぅ
侑吾:
あとお前はもっと何か食いながら飲め?
これ美味いぞ。「珠玉のサキイカ」。
芽衣子:
え?何のサキイカ?!
侑吾:
珠玉!ほれ。
芽衣子:
あーん
侑吾:
自分で食べなさい。
芽衣子:
あーん!!!
侑吾:
圧をかけるな!ったくしょうがねぇなぁ。
ほらよ。
芽衣子:
むぐむぐ…
侑吾:
どう?
芽衣子:(噛んで)
おぉ…!すごくしゅぎょきゅ!!
侑吾:
なんだって?
芽衣子:(噛んで)
すごくしゅぎょきゅ!!
侑吾:(ゆっくり噛まずに言うこと)
す ご く 珠 玉 ?
芽衣子:
そうそれ!絶対言えないから早口で3回言ってみ?
侑吾:(早口で)
すごく珠玉すごく珠玉すごく珠玉
芽衣子:(言えてるか言えてないかによってリアクション変えて下さい)
ほら言えないじゃーん!(すご!言えてるんだけどー!)
侑吾:
芽衣子。
芽衣子:
んー?
侑吾:
俺は、芝居やめないから。
芽衣子:
なぁに、急に真剣な顔しちゃってー。
侑吾:
いや、それだけは言っときたくて。
芽衣子:
それだけ?
侑吾:
え?
芽衣子:
私だったらその後、「だからお前は俺のために脚本書いてくれ!」ってセリフ付けるけど。
侑吾:
現実はそうカッコいいセリフなんて出てこねーの!
芽衣子:
でももし私が書くの辞めたらさー。
その後他の脚本家の台本で侑吾が芝居すると思うと…なんか嫌かも…。
侑吾:
なにそれ告白みてーじゃん。
芽衣子:
違いますぅう
侑吾:
芽衣子。
芽衣子:
なに…
侑吾:
これからも書けよ脚本。俺が全部演じてやっから。
芽衣子:
…っ…。
侑吾:
あれ…?芽衣子さーん?
芽衣子:
今の、イイ…!!侑吾、俺様キャラもいいかも!!
やっべ!ムラムラしてきたー!
侑吾:
執筆欲が湧いたときに「ムラムラする」って言い方いい加減やめろよな?!?
芽衣子:
くそっ!パソコン立ち上げてる時間はない!
かくなる上は、珠玉のサキイカで文字をかたどってメモ代わりにするしか…
侑吾:
出来るかぁぁ!100袋は必要だわ!
芽衣子:
あ、油性ペン発見!でもメモ帳とかない!
よし、服を脱げ!お前のブリーフに書く!
侑吾:
そういうのいいから!お前飲みすぎだから!
ちょっ!やめろ脱がそうとすな!
頼むから!!恥じらいをもってくれぇぇぇぇ!!
End.
―――――――――――――――――――
0コメント