ねこまんま。〜朗読ver.〜
【1人朗読台本】
【不問1 日常・感動系】
【所要時間目安:10〜15分程度】
●上記イメージ画像は、ツイキャスで生声劇する際のキャス画にお使い頂いても構いません。
●ご使用の際は、利用規約をご一読下さい。
【お知らせ】
・こちらの台本は、2人用ver.の台本(1:1)もございます。リンクはこのページの一番下にも貼っておきます!
【演じる際の注意点】
・視点は猫です。初見読み禁止というわけではありませんが、軽く目を通してから使って頂けると嬉しいです。
・2人用台本の方ではオス猫設定ですが、朗読の方ではあまり性別は気にしなくても大丈夫です。女性の方は「僕っ子」で読んで下さい。
↓生声劇等でご使用の際の張り付け用
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『ねこまんま。~朗読Ver.~』
作:レイフロ
朗読:
https://reifuro12daihon.amebaownd.com/posts/9397582
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以下、台本です。
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紙のめくる音が好きだ…。
字が読めない僕に、おばあちゃんは本を読んでくれた。
紙をめくる動作がおもしろくて、初めは目で追っていたけれど、
だんだんウズウズしてきて、ちょいと手を出して妨害してみる。
おばあちゃんは、ふふふと笑って「だめよ」と言いながら、僕の頭を優しく撫でた。
物語というのは、どうしてこうも眠気を誘うのだろう。
それともおばあちゃんの声が心地よいからだろうか。
膝の上が温かくて気持ちがいいからだろうか。
僕はいつだって物語の途中で眠りに落ちてしまう。
だから、ほとんどのお話の結末を知らないのだ。
お姫様はどうなったの?
王子様と幸せになれた?
僕はおばあちゃんにそう問いかけるが、
おばあちゃんは今日も、物語の最初から朗読を始めてしまう。
そして僕は、やはり途中で夢の中へと落ちてしまうのだ。
紙をゆっくりとめくる音。
優しい声。
僕の頭を撫でる感触。
僕は目を閉じて、それらをひとつひとつ思い出す。
おばあちゃんは、ある日突然いなくなってしまった。
何故だかはわからない。
どこにいってしまったのだろう?
僕は次々に浮かぶ悪い考えを必死に頭の中から追い出して、
今日もまた、おばあちゃんとの楽しい記憶を思い出すことに専念する。
おばあちゃんの優しい声を、手の感触を忘れてしまうのが恐くて、
ご飯を食べることも忘れて…
ひたすら目を閉じて、記憶の中のおばあちゃんに会いに行った。
そんな僕の顔を、小うるさいガキがのぞきに来る。
僕とおばあちゃんの静かな時間をたびたび邪魔してきたガキだ。
ガキは、「猫ちゃん元気ないねー?」と言って僕の前にバサッと絵本を広げた。
おばあちゃんのマネをして朗読でもする気なのだろうか。
いい迷惑だ。
案の定、自分の知らない字を飛ばして読むせいで、何の話かさっぱりわからない。
雑にめくる紙の音。
幼い声。
僕の頭を遠慮なくグリグリと撫でる小さな手。
シャーッ!(←威嚇)
僕は、なぜかイライラして毛を逆立てた。
ガキは怖がるどころかキャッキャと喜んで、僕のマネをして「シャー」とすごんで見せている。
ガキはノンキでいいよな。
てんで何も考えていない。
おばあちゃんがいなくなったって、遊び相手を僕に変えればそれで楽しいんだから。
おばあちゃんとの日々が恋しかった。
おばあちゃん…会いたいよ。
僕の前には、今夜もキャットフードが置かれた。
ガキが「食べて食べて」と、とにかくうるさい。
食べる気など起きなかった。
いつもはおばあちゃんが、お手製のごはんを作ってくれていたのだ。
ごはんの上に煮干しをのせて、その上からお味噌汁をぶっかけた「ねこまんま」。
それが僕のごはん。
僕はキャットフードを一瞥(いちべつ)して、いつもの場所で丸くなった。
現実から逃げるようにそっと目を閉じる。
おばあちゃんに会いに行こう。
僕は、そのことばかり考えるようになっていた。
ウトウトし始めた頃、なにやら騒がしくて、しょうがなく薄目を開けた。
廊下をドタドタと走ってくるガキの姿が見えて、僕は思わず飛び起きた。
わー!ぶつかるー!
ガキは、危なく僕を踏みそうなところでギリギリ止まり、ケタケタと笑っていた。
からかわれた…?
頭にきて爪を立てようと身構えた時、嗅ぎ慣れた香りが、鼻孔(びこう)をくすぐった。
このニオイは…「ねこまんま」?
ガキは、「ごはんどーぞ」と言って、にこにこしている。
僕が、ガキの顔とねこまんまを交互に見ていると、聞いてもいないのに、ガキは舌ったらずな口調でおばあちゃんとの約束を話し始めた。
要約するとこうだ。
僕には、その時のおばあちゃんの光景を、容易に想像することが出来た。
「いいかい、りん。
これからはおばあちゃんの代わりに、シロにごはんをあげておくれ。
あの子は気難しくて、慣れるまでは引っ掻いたりするかもしれないけれど、本当はとっても優しくてイイ子だからね。
おばあちゃんがいなくなったら、もしかしたらシロは、元気がなくなってごはんを食べなくなるかもしれない。
でも、諦めずに何度でもごはんをあげておくれ。
ごはんを食べればきっと元気になるからね。
りんも覚えておいで。
どんなに悲しくても、まずはごはんを食べなくちゃ。」
僕は、目の前に置かれたねこまんまを見つめた。
ここ数日、ほとんど何も食べていないのに不思議とお腹が空かなかった。
お腹も頭も、おばあちゃんがいない悲しみでいっぱいだったから。
クンクンと鼻を動かすと、香ばしい味噌に交じって、煮干しのいい匂いもしている。
僕の口には、自然とよだれが湧いて、空っぽの胃が急にグゥと音を立てた。
あぁ、お腹が空いた。
僕は汁をひと舐めした後、ガツガツとねこまんまを食べ始めた。
ガキが、興奮したようにぴょんぴょんと飛び跳ね、「シオがゴハン食べたー!」と騒いでいる。
まったく。僕の名前は「シロ」だって言ってるのに。
舌ったらずのクソガキめ。
数日ぶりにまともに食べたごはんは、おばあちゃんのねこまんまを鮮明に思い出させた。
だんだんとぼやけかけていたおばあちゃんの笑顔が、目の前ではしゃいでいるガキの…、りんの幼い笑顔に少しだけダブった。
「シオ、たくさん食べてえらいねー!」
りんはそう言って、僕の体を抱きしめた。
まだ加減が分からないのだろう。
遠慮なく、ギューッと抱きしめられた。
突然のことに、僕はじたばたと体をくねらせたが、りんは離すどころか、クンクンと僕の匂いを嗅ぎ始める。
「おばあちゃんにだっこしてもらうとね、
いっつもシオの匂いがしたの…」
さっきまでの高いテンションはどこへやら、僕の頭に水滴がポツポツと降ってきた。
やがてワンワン泣き出したりんは、泣き止むまでずっと、僕を離してはくれなかった。
本当は分かっていた。
おばあちゃんがどこに行ってしまったのかを。
もう戻ってこないことを。
ただ認めたくなかっただけだ。
「ごはんはおばあちゃんからしか食べないぞ!」
と意地を張れば、
しょうがないねぇ、と言っておばあちゃんが迎えに来てくれるかもしれないと、心のどこかで思っていたのだ。
悲しいのは僕だけじゃなかった。
りんは、おばあちゃんから託された約束を必死に果たそうと頑張っていたのだ。
おばあちゃんが、僕のことを一等(いっとう)大事にしていたことを、りんは知っていたから。
僕にちゃんとごはんを食べさせて、おばあちゃんが安心して天国へ行けるように。
僕は、大泣きしてすっかりしょっぱくなったりんの頬をペロリと舐めた。
りんは驚いて、僕をきょとんと見つめている。
ようやく泣き止んだかと思った瞬間、りんはまた顔をくしゃくしゃにさせて泣き始めたかと思うと、こう言った。
「シオのベロ、ざらざらして痛いぃぃぃ」
と。
はぁ…(ため息)
せっかく僕が慰めてやったのに、本当に失礼なヤツだ。
おばあちゃん。
こんなガキに僕の世話を頼んでいくなんてひどいよ。
あまりにひどいから、りんがおばあちゃんみたいな立派なニンゲンになれるように、
しばらく僕が面倒を見てあげることにするよ。
だから。
いつかまた会える時まで、
お空で待ってて。
あれから、10回目の春が来た。
僕は陽の当たる縁側(えんがわ)で丸くなり、一日のほとんどを寝て過ごしている。
「シロ、ただいま!」
と、図体だけはすっかり大人びたりんが、制服の裾(すそ)をはためかせて、まっすぐに僕の傍に来る。
僕は、「おかえり」の代わりに大きなあくびを一つ。
りんは、「シロもすっかりおじいちゃんだね」と笑いながら僕を優しく抱き上げる。
昔は苦手だった抱っこも、クンクンと匂いを嗅がれることも、もう慣れっこだ。
りん曰く、僕の匂いを嗅ぐと、とても落ち着くそうだ。
こんな幸せな日々がいつまでも続かないことを、僕もりんも知っている。
ずーっと一緒にはいられないことを。
それでも、この幸せな日々が一日でも長く続くように、僕は今日も、りんにねだるのだ。
「ごはんちょうだい」 と。
(↓以下の鳴き声を最後に入れるかどうかは、演者様にお任せ致します)
ニャー!
End.
作者:レイフロ
Twitter→@nana75927107
👇おばあちゃんの孫の「りん」と猫の「シロ」の2人ver.の台本もございますので、ぜひそちらもよろしくお願い致します(,,,ᵕᴗᵕ,,,)⁾⁾
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