INTERACTIVE CHAIN WORLD〜インタラクティブ チェイン ワールド〜(5人台本)

【五人声劇台本】
【男3:女2  和風バトルファンタジー】
【所要時間:40分程度】

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※こちら詠唱がある関係で、ルビ(フリガナ)が見づらいかもしれません。カクヨムという小説投稿サイトに載せている方だと、漢字の上にフリガナが振られているため、演者の皆様はそちらの方を見て演られた方が確実に演りやすいですw
↓以下のリンクはカクヨムに飛びます

●上記イメージ画像は、ツイキャスで生声劇する際のキャス画にお使い頂いても構いません。

●ご使用の際は、利用規約をご一読下さい。

【あらすじ】

平安時代。陰陽師の家系である大昶家(おおあきらけ)が、悪鬼から人々を守っていた。

だが、新しく当主となったのは大昶家の次男、良充。

兄の良哉は恨みから闇に堕ち、力では敵わない良充に復讐するため、悪鬼に魂を売り渡し、

時空を超えて平和な現代に生きる大昶家の遠い子孫を殺そうとする。

それを阻止すべく、未来に送りこまれたのが、良充の弟子である和皐だった。


【人物紹介】

☆和皐(カズサ) ♀

陰陽師の家系である大昶家に代々使える者。

良充の弟子で、まだ若く修行の身。


△大昶 良充(オオアキラ ヨシミツ)  ♂

陰陽師の家系・大昶家の次男でありながら現当主となった。

兄は良哉。穏やかでとても優しく、人望に厚い。


▼大昶 良哉(オオアキラ ヨシナリ)  ♂  ※「男」も兼役でお願いします。

良充の兄。大昶家の当主となれず、

恨みから悪鬼によって闇に堕ちてしまう。


◇大地(ダイチ) 不問 ※女性が演じる場合は男の子役として演じて下さい。

大昶家の遠い末裔。陰陽師の家系だということもよく分かっておらず

平和な現代を生きている。真っ直ぐで負けん気が強い。


◆莉子(リコ) ♀ 

大地とは同級生で、隣の家に住む幼馴染。

活発でボーイッシュだが、顔は割と可愛い。

※「姐」も兼役でお願いします。


【注意点】

・兼役がある方もいるので、以下の記号で検索をかけると分かりやすいです。

☆・・和皐役の方(セリフ数71)

△・・良充役の方(セリフ数50)

▼・・良哉&男役の方(セリフ数50)

◇・・大地役の方(セリフ数62)

◆・・莉子&姐役の方(セリフ数56)


【演じる上での注意点】

・莉子役以外の上記主要キャラには、詠唱があります(良充は少しだけ)。

バトルシーンだけでも軽く目を通してから演じられることをお勧めします。

・場面が、現在と過去のシーンがだいぶ行き来しますので、

 『場転』のところは、きちんと間を取ってください。



↓生声劇等でご使用の際の張り付け用

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INTERACTIVE CHAIN WORLD

作:レイフロ

https://reifuro12daihon.amebaownd.com/posts/7982355

☆和皐:

△良充:

▼良哉&男:

◇大地:

◆莉子&姐:

――――――――




以下、台本です。

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◇大地N:

あぁ、俺は死ぬんだ…。

蛇行しながら自分に突っ込んでくる車がスローモーションで見えた。


☆和皐:

こらぁ!ぼーっとしてないで早く避けてー!


◇大地:

はは、ついに幻覚まで見える!女の子が俺の目の前に浮いてる…あはは


☆和皐:

呆(ほう)けてる場合か!急げっ!(大地の頭を叩く)


◇大地:

いだっ!…え?なんで女の子がっ!?

てゆーか車がスローモーションみたいに遅いっ!


☆和皐:

お主のために力を使って時間(とき)の流れを遅くしておるのじゃ!

早(はよ)う向こうに渡れーっ!


◇大地:

はっ、はいぃ!


◇大地N:

俺が急いで横断歩道を渡ると、時の流れが戻った車は甲高いブレーキ音を立てながら止まった。


☆和皐:

良充(よしみつ)様の言った通りじゃ。

我らの時代から数百年後は、技術が発達し便利にはなっているが、

それ故に悪鬼(あっき)とは異なる脅威もまた、増えている…。


◇大地:

君は、一体…


☆和皐:

あぁ、すまない!私は和皐(かずさ)!

お主の名は?


◇大地:

俺は大地。

大昶(おおあきら)大地。


☆和皐:

大昶、大地…。

そうか、やはりお主が良充(よしみつ)様の!


◇大地:

ヨシミツって誰?!


☆和皐:

とにかくお主の家に連れて行ってはくれないか?

来て早々、力を使ったせいで眠い…ふあぁ。


◇大地N:

こうして俺は、不思議な少女・和皐(かずさ)と出会った。




(場転)




△良充:

和皐(かずさ)。ほれ、和皐。


☆和皐:

ふあっ!?寝てません!寝てませんよっ?!


△良充:

ふふ、思いっきり寝ておったぞ。口元にヨダレの跡がある。


☆和皐:(慌てて拭う)

ちっ、違います!和皐は…


△良充:

寝ておったな?


☆和皐:

うっ…。はい…。


△良充:

顔を洗って来い。お前に使命を与えよう。


☆和皐:

使命?そんな…和皐はまだ力も制御できない未熟者。

姐(ねえ)さん方とは似ても似つかん出来損ないじゃ。


△良充:

出来損ない、と誰が決めた?


☆和皐:

皆がそう言って…

あっ!良充様っ!歩いちゃダメーっっ!


△良充:

おっと…!小さな花だ…

危なく踏むところであったな。


☆和皐:

はい、良かっ、た……あああああああ!!!


△良充:

どうした?そんな頓狂(とんきょう)な声を上げて。


☆和皐:

この花を避けたせいで、良充様のお召し物が…っ


◆姐:

…っ!なんということっ!

お前には屋敷の裏の警備を任せたというのに、その任もまともにこなさないどころか

良充様に水溜りを踏ませるなど!

一体どういうつもりじゃ!


☆和皐:

姐(ねぇ)さんごめんなさい!わざとでは…


◆姐:

良充様!申し訳ございません!

この出来損ないにはあとでキツク言い含めますので!


△良充:(囁くように)

―――喧々(けんけん)たる者、粛然(しゅくぜん)と控えよ…

静(セイ)っ!


◆姐:

ひっ…!動けな…っ


△良充:

足元を見よ。

さっき私が踏まずに済んだ花を、お前が踏もうとしている。


◆姐:

あ…っ!


△良充:

召し物など、着替えれば良い。


☆和皐:

良充様っ!姐さんの呪縛を解いてあげて下さいっ!


△良充:

お前を“出来損ない”と呼んでいるのはこやつか?

頭には来ぬのか?


☆和皐:

そんな…!

姐さんは和皐をなんとか立派に育てようとしているだけです!


△良充:

ふ…。(優しげに笑う)

―――解(カイ)っ!


◆姐:

あ…はぁはぁ…動く…


△良充:

皆に伝えよ。大広間に至急集まるようにと。


◆姐:

は…はいっ…!(駆け出す)


△良充:

…さぁ、行くぞ。

お前は責任を持って私の着替えの手伝いをせよ。




(場転)




◆莉子:

ねぇ…ほんっとうにこの女の子が助けてくれたの?


◇大地:

そうだってば!ここに連れてきた途端にソファで寝ちゃったけど…。


◆莉子:

なんか服もコスプレみたいだね…丈の短い着物みたいな。


◇大地:

てゆーかそんなことより!

まじでこの子、宙(ちゅう)に浮いてたんだって!


◆莉子:

宙に浮いてたとか…まじで言ってる?


◇大地:

車がすごい勢いでガーッって来てたのに、

いつの間にかのろのろーってなって

俺がフワ~ってなってたら、コラーって!!


◆莉子:

大地の鼻くそみたいな語彙力じゃわかんないから黙ってて!


◇大地:

鼻くそ…って、お前も一応女だろ?

なんとかした方がいいのはお前の言葉使い…


◆莉子:

何よ、人のこと呼びつけておいて!

隣の家だからって気軽に呼ばないでよねー?


◇大地:

それはどうもすみませんでしたぁ。

お忙しい中お越しくださり、ありがとうございますぅぅぅ


◆莉子:

ムッカツク…


☆和皐:

んん…。よ…みつ…さ…


◇大地:(耳をそばだてる)

ん?なんか言ってるぞ?


☆和皐:(泣きながら)

良充様ぁぁぁ!!どうして和皐なんでずがぁぁぁぁ


◇大地&☆和皐:(飛び起きた和皐と頭をぶつける)

いでっ!!


◆莉子:

ちょっと大丈夫?えっと…和皐、ちゃん?


☆和皐:

イタタ…ふぇ?!女子(おなご)!?

だ、誰だっ!


◆莉子:

あぁ、えっと、私は莉子(りこ)って言って…


☆和皐:

莉子とやら!お主は大地様とはどういう関係だっ!


◆莉子:

大地様?!いや、どういう関係って…

幼なじみっていうかただの腐れ縁っていうかただのお隣さんっていうか…!


◇大地:

どんどん格下げになってないか?


◆莉子:

だいたいそんなものでしょ?


☆和皐:

大地様、尻に敷かれておるのだな…。


◇大地:

敷かれてない!

あと、「様」はやめてくれ。大地でいいよ。


☆和皐:

はっっ!こんなのんびりしている場合ではなかった!

お主には危険が迫っているのだ!


◇大地:

危険?それならさっき暴走した車から助けてくれたじゃないか。


☆和皐:

あれは偶然ではない!お前は狙われているんだっ!


◆莉子:

狙われてるって一体誰から?


▼良哉:

ははは、見つけた…見つけたぞ!

大昶家(おおあきらけ)の末裔よ!!


◇大地:

は?!何だ?!黒い影が集まって…人、なのか?!


◆莉子:

ど…どうなってるの?!


☆和皐:

お止め下さいっ!良哉(よしなり)様っ!


▼良哉:

む…?貴様、良充(よしみつ)が可愛がっていた弟子の和皐(かずさ)ではないか…。

我が現れる時代を予想して先回りしておったか…良充め!!


☆和皐:

良哉様!どうかお静まり下さいっ!


▼良哉:

五月蝿いッッ!!


(突風が吹き荒れて、和皐、壁に叩きつけられる)


☆和皐:

ぐはっ…!


◆莉子:

和皐ちゃんっ!大丈夫?!


☆和皐:

莉子…逃げろ…!


◆莉子:

和皐ちゃんも一緒に!

…っ何?!なんか、部屋が黒い霧で…

ゲホゲホっ、喉が、痛い…


◇大地:

莉子っ!これを口に当てとけ!


◆莉子:

う、うん…、大地は何ともないの?


◇大地:

俺?別になんともないけど?


▼良哉:

この黒い霧に中(あ)てられぬとは…

やはり貴様が大昶(おおあきら)の末裔だな。

それにしても、我が弟、良充の血筋がこんなに軟弱な男とは…

ふはは、笑わせてくれる!


◇大地:

俺のことを言ってるのか?


▼良哉:

悲しいかな。

良充なんぞに力を継承させるから末代はこのザマよ!はははは!


☆和皐:

良哉様、考えをお改め下さい!

良充様の遠き子孫を手にかけたところで、どうして貴方様の気が晴れましょう?!


▼良哉:

そうかもしれぬ…。

だがな、我を止めるために良充が送り込んできたのが

貴様のような出来損ないの弟子とはどういうことだ?!

どこまでも兄を愚弄(ぐろう)しおって!!


☆和皐:

ぐ…っあ゛…っ!


◇大地:

やめろっ!その子の首から手を離せっ!

死んじまうだろっ?!!


▼良哉:

せっかく強大な力を使って数百年後の未来に来たのだ。

軟弱な良充の子孫を殺すだけではつまらぬ。和皐もついでに嬲(なぶ)り殺そう。


◇大地:

おいっ!離せって言ってんのが聞こえねーのかっ!


☆和皐:

だい、ち…印(いん)を、結べ…


◇大地:

イン?インってなんだよ!


◆莉子:

ゲホゲホ…大地、印って、

昔あんたのおじいちゃんに教えてもらって、よくやってたやつじゃないの?!


◇大地:

は?あんなのただの手遊びだろ?!


◆莉子:

うっ…ゲホゲホっ!


◇大地:

莉子!しっかりしろ!


▼良哉:

我(われ)はこの時代には異質な存在。

関わり無き者にはこの黒い霧は毒と同じよ。


◇大地:

なんだって?!


◆莉子:

く、るしい…っ


▼良哉:

恨むなら良充じゃ!全てあやつが悪い!

兄を差し置いて全てを奪っていったあやつが!!はははは!


◇大地:

くそ…!じいちゃんに教わった手遊び…

確か、んーっと…!こうやって、こうやって…こうだッ!!


☆和皐:(↑「こうだッ!!」と同じくらいのタイミングで) 

―――爆(ばく)ッ!!


(SE:爆発の音)


▼良哉:

ぐあッ!!なにぃ?!


☆和皐:

はぁ、はぁ…!よくやった!大地!


◇大地:

今の何だ?俺がやったのか?


▼良哉:

気が変わった。

このまま嬲(なぶ)り殺しにするのは簡単だが、力が使えると言うのなら楽しめそうだ。


◆莉子:

あ…っいや!なにするのよ!


◇大地:

莉子っ!!


▼良哉:

ここは狭い。我の空間で存分に楽しもうぞ。

追ってくるが良い。

…それまで、この女子(おなご)は預っておくぞ?


◆莉子:

大地っ!…ゲホゲホ、助け…!


◇大地:

莉子―っ!!

…ちくしょう!消えちまった!

和皐、どうなってんだよ!莉子が連れてかれちまった!


☆和皐:

落ち着け!莉子を助けるためには、お主の力が必要なのだ。


◇大地:

俺の?さっき印を結んだみたいにか?


☆和皐:

お主の祖先・大昶家(おおあきらけ)は代々、

悪鬼を調伏(ちょうぶく)することの出来る特別な力があった。

さっき感じたんだ、お主にも内に秘められた力があることを!


◇大地:

じいちゃんから教わったのはさっきやったあれ一つだぞ?!

そんなんでアイツに勝てるのか?!


☆和皐:

私にだって大きな力はない…

でも、お主と力を合わせればきっと良哉様を止められる!

お主は莉子を助けたくはないのか!


◇大地:

助けるに決まってる!お前が行かなきゃ俺だけでも行く!

…って、行き方わかんねーけどッ!


☆和皐:

ふふ、その意気だ!

…良充様、待っていてください。必ずや良哉様を…。




(場転)




▼男:

良充様…今、なんと…?!


△良充:

闇へと堕ちた我が兄、良哉(よしなり)の討伐に、和皐を遣(つか)わす。


▼男:

なぜ和皐なのですか!まだ半人前もいいところです!

それに良哉様はどこへ消えてしまわれたのですか!


△良充:

兄…いや、奴(きゃつ)は、自らの魂と引き換えに数百年後の未来へ干渉する力を得た。

私にはどうあっても勝てないと知り、復讐するつもりなのだ…私の遠い子孫に。


◆姐:

でも、良充様の子孫であれば大事(だいじ)ないのではありませんか?!


▼男:

そ、その通りです!

大昶家(おおあきらけ)の力は未来では更にお強くなられているのでは?!


△良充:

いいや。

大昶家(おおあきらけ)のこの力は、妖(あやかし)が蔓延(はびこ)るこの時代にこそ必要なもの。

時代の移り変わりと共にだんだんと消えていくのが正しきことなのだ。


▼男:

そんなっ!大昶の血は未来永劫続くのではないのですか!


△良充:

私の「卜い(うらない)」によれば、

奴(きゃつ)が向かったとされる数百年後も、大昶の血は受け継がれている。


◆姐:

よかった…


△良充:

だが、『理(ことわり)の力』はもう必要とされていないようだ。


▼男:

では、世界は平和になったということですか?


△良充:

その時代にはその時代の脅威が何かしら存在するものよ。

だが少なくとも、妖の脅威はほとんど存在せぬようだ。


◆姐:

であれば、大昶家の力が無事役目を終えた後の時代なのですね。


▼男:

なんとも複雑な心持ちです…


△良充:

何を言う。喜ばしいことだ。

だがそのせいで、平和な時代を生きる我が末裔が殺されてしまうやもしれん。


◆姐:

ですから助っ人をお送りするのであれば、もっと力の強い者を送るべきです!


▼男:

良充様が行くことは出来ないのですか?


△良充:

私を未来へ送り出せる者がいるとしたら、

それは大昶家最大の力を持つとされた曽祖父(そうそふ)の力が必要だろうな。


▼男:

そ、そんな…。


△良充:

現実的な話として私が行くとなれば、奴(きゃつ)と同じ方法を取らねばなるまい。

悪鬼に魂を売り、向こうには行ったきりとなるだろう。


▼男:

ですが、和皐に何が出来ると言うのですか?

まだ自分の力も十分に発揮出来ないというのに…。


△良充:

だから丁度良いのだ。力の強い者ほど未来へ送ることは難しく、

そこで私が力を使い過ぎれば今度は魂を引き戻せなくなる。


▼男:

だからと言って力のない者を送っても無意味!

良充様は、それ程までに和皐を見込まれているのですか?


△良充:

私には、和皐以外の者を送り込む選択肢はないと断言できる。

…異論のある者は?


▼男:

良充様がそこまでおっしゃられるのであれば…。


◆姐:

私たちはそのお言葉を信じるまでです。


△良充:

和皐には秘めたる力がある。必ずや私の遠い遠い子孫の助けとなってくれるはずだ。

そして我が兄、良哉にどうか私の想いを伝えてくれ…。




(場転)




▼良哉:

…ふ、来たか。貴様も可哀相なことだ。

先祖が不甲斐ないばかりに、とばっちりを受けて死ぬのだからな。


◇大地:

俺には先祖のことなんてわからない。

でも関係のない莉子まで巻き込むことは許せない!返してくれ!


▼良哉:

こんなもの。ほれ。


◆莉子:

う…っ


◇大地:

莉子!しっかりしろ!


◆莉子:

はぁ、はぁ…


☆和皐:

ここは良哉様が作り出した異空間…。

あの方を倒してこの空間を消さない限り、莉子は弱る一方だ!大地、急ぐぞっ!


◇大地:

わかった…!

莉子、少し待っててくれ、すぐに助けるからな!


◆莉子:

大、地…気をつけ、て…


☆和皐:

良哉様!良充様に代わり、必ずや貴方様の魂をお助けしますっ!


▼良哉:

助けるだと?

我が今までどれだけ惨めな思いをしてきたかも知らぬガキが…!

笑止(しょうし)ッ!


☆和皐:

良充様は和皐に大切な想いを託されました!兄上に伝えてくれと!


▼良哉:

父や皆の信頼や、理(ことわり)の力さえも奪っていった愚弟(ぐてい)が、

今さら何を伝えようというのか!

我は悪鬼の力を利用し、自分の力として取り込んだ!

良充よりもすごいことをしてのけた我が、なぜ理の力を継承出来ぬのかっ!


☆和皐:

良哉様は悪鬼を取り込んだのではありません!

取り込まれてしまっているのです!


▼良哉:

何を言うか!我が大昶家(おおあきらけ)の長兄(ちょうけい)ぞ!

我こそ力を引き継ぐに相応しかったのだっ!


◇大地:

その力で人々を守るのが使命だったんだろ?

なのにあんたは、弟には敵わないと悟って、

わざわざこの時代に来て、力のない俺を殺して小さな自尊心を充たそうとしてる…


▼良哉:

黙れ黙れッ!

我(われ)を否定する者は全員殺すッ!


◇大地:

和皐、アイツから悪鬼を引き剥がすことは出来ないのか?


☆和皐:

悪鬼の恐ろしいところは形がないことなのだ。

良哉様の心と同化してしまっている…。もう、元には戻らない…。


◇大地:

そっか…アイツごと倒すしかないんだな…。


☆和皐:

なんとか動きを止めることが出来れば…!

良充様からお預かりした想いを、良哉様にお伝えすることが出来るのだが…。


◇大地:

俺がなんとかしてやる…!指示をくれ!


▼良哉:

何をブツブツ相談しておる!

死ぬ準備は出来たのだろうなぁ?!


☆和皐:

大地、ここは異空間。お主の集中次第で、きっと力を使うことが出来る。


◇大地:

あぁ。どうすればいい?


☆和皐:

お主にも大昶家(おおあきらけ)の血が流れている。

私の声に耳を澄ませ。口から自然と出る言葉を受け入れるのじゃ。


◇大地:

わかった。和皐のこと、信じるよ。


▼良哉:

滅びよ!忌々しい血族けつぞくめっ!

『悪鬼よ

我が毒念(どくねん)・毒心(どくしん)に応じ

偽善の者を薙(な)ぎ払えッ!

怨(オン)ッ!』


☆和皐:

『天壌無窮(てんじょうむきゅう)たる清き風よ

邪悪なる力を防遏(ぼうあつ)せよっ!』

…良哉様!悪鬼に負けず、どうか!この声を聞いて下さいっ!


▼良哉:

負けてなどおらぬ!我は大昶良哉!大昶家の当主ぞ!!


☆和皐:

ぐっ!!

…大地っ!頼む、良哉様の動きを止めてくれ!

『我、先立(さきだ)ちて発顕(はつげん)し

この者の才幹(さいかん)を呼び覚まし

深奥(しんおう)に眠る無垢(むく)なる力を開放せよ!』


◇大地:

(俺が知ってる印はひとつしかないはずなのに…なんだ?手が勝手に動く…)


▼良哉:

貴様、和皐(かずさ)の後ろに隠れて何をしているッ!首から下は要らん!

―――滅びよッ!!


◇大地:

『大岩(おおいわ)の如(ごと)く

大樹(たいじゅ)の根の如く

強固な壁と成りて

如何(いか)なるものも打ち砕けッ!』


▼良哉:

なにッ?!

我の術が…相殺(そうさい)した、だと?!


◆莉子:

なに、今の…!大地がやったの…?


☆和皐:

その調子だ大地!ここはヤツだけに都合のいい空間ではない!

眠った力を引き出せる特別な空間なんだ!


◇大地:

ってことは!…莉子、じっとしてろよ?


◆莉子:

ゲホゲホ、…え、何っ?

私に跪(ひざま)づいて、どうしたの?!


◇大地:(小声で)

『護り給たまえ

悪しき霧を弾き

黎明(れいめい)の間(ま)を此処(ここ)に 

…創(ソウ)ッ!』


◆莉子:

あっ…嘘みたい、呼吸が楽になった!


◇大地:

これはお前が今居るところだけだから、そこから動くなよ!


◆莉子:

うん!

あっ!和皐ちゃんが!!


☆和皐:

『我が声よ風になれ

疾風(しっぷう)の如(ごと)き速さにて

闇をも通り抜けよ!

…颯(ハヤテ)ッ!』


▼良哉:

何だその術は?弱々しい風がただ通り抜けていっただけとは!

どこまで出来損ないなのだ!

良充はこやつに一体何を期待したというのか!あははは!!




(場転)




☆和皐:

良充様待って下さい!

何故和皐を選ばれたのです!もう一度お考え直し下さい!


△良充:

そう声を荒げるな。「かの者」の声が掻き消えてしまう。


◆姐:

なんと!精霊ではありませぬか!

聖なる泉はここからはずっと遠いのに何故!


△良充:

この精霊は跳ねっ返りでな。

冒険に出るといって泉を離れすぎたために休んでいたのだ。

…小さな花に姿を変えてな。

あの時私が踏みそうになった花は精霊だったのだ。

和皐が注意してくれなくては踏んでしまっていた。


◆姐:

なんてこと…私も危うく…


△良充:

不思議なことだ、私が気付かぬ程精霊の力は弱っていたのに、

かの者の声が主には聞こえていたのか?


☆和皐:

なんとなく、ですけど。


◆姐:

和皐、お前にはまさか「聴く力」があるのか…?


△良充:

それに気付き、物怖じせず言葉に出せる力もだ。


◆姐:

確かに。良充様に向かって、「歩いちゃダメ!」などと

普通は言えるものではありません!


☆和皐:

ひゃああごめんなさい!あの時は咄嗟(とっさ)だったのでっ!


△良充:

ははは、それで良いのだ。

誰かを助けようとするのに、相手が偉いかどうかは関係ない。

なぜ自分を選んだのかと問うたな?私も正直に言おう。

皆の前では、「良哉(よしなり)を討伐する」と言ったが、

私は兄を打ち倒したいわけではないのだ。


◆姐:

ですが、あそこまで悪鬼に蝕まれていたら、もう元には戻らないのでは…?


△良充:

あぁ。どう足掻いても私の兄はもう戻ってこない。

だが、最期に人の心を取り戻すことは不可能ではないと思っている。

幼き日の兄が本当の良哉(よしなり)なのだ。

私に術を教えてくれた、厳しくて、強くて、優しい兄が…。


◆姐:

良充様…。


△良充:

どうか最期に。私の気持ちを兄に届けてやってはくれないだろうか…。

闇に染まった兄の微かに残る善心(ぜんしん)を見極められるのはお前しかいない。

この通りだ…。


◆姐:

良充様が、頭をお下げに…!


☆和皐:

や、やめて下さい良充様!

わかりました、上手くいくかはわかりませんが、和皐は頑張ります!

自分に出来ることを、精一杯!


△良充:

ありがとう。

…ありがとう、和皐。




(場転)




☆和皐:

私に全てを託した良充様は、

地面に血が滴(したた)るほど強く拳を握り締めていました!

自分がここに来られるものなら来たかったに違いありません!


▼良哉:

あははは!皆死ねば良いのだッ!!

我と共に地獄へ堕ちようぞ!!

『我が怨嗟(えんさ)よ

天地万有(てんちばんゆう)全てを

淪落(りんらく)の淵(ふち)へ堕とし給(たま)えッ!

怨(オン)ッ!!』


◇大地:

和皐!俺が動きを止める!頼んだぞッ!

『不動なる御(おん)、地にて

重き力をその身に受け

矢庭(やにわ)に凝然(ぎょうぜん)と座(ざ)せッ!』


▼良哉:

ぐぎぎ…ッ!

こんなモのでッ、我(われ)ガ、止められルかぁぁぁぁぁ!!


◇大地:

ぐっ…!!押し、戻される…っ!!


◆莉子:

大地っ!!


◇大地:

バカっ!防護壁から出るなって言ったのに!


◆莉子:

ゲホゲホ、大丈夫!私も支えるから…!

もっと力出せーっ!!


◇大地:

はは、了解っ!

『渦巻く濁流よ

あらゆる者を飲み込み

彼方(かなた)まで押し流せッ!』


▼良哉:

バカなっ!虫けらの分際でぇぇ!

我が動けぬ筈がない!止まる筈がない!動けぇぇぇ゛ぇ゛ッッ!!


◆莉子:

ひっ…腕が、千切れた…っ!


◇大地:

動きを止めているのに無理やり動かしたからだ…

ぐっ、また力が強く…!これが怨みの力…っ!


◆莉子:

もう、ダメ…っ暗闇が、迫ってくる…っ!


☆和皐:

ふぅ―…(深呼吸)

『遙か悠久(ゆうきゅう)の時へ冴(さ)え

揺らがぬ鮮麗(せんれい)の守壁(しゅへき)にて

悪しき魂 乖離(かいり)せし 

深奥(しんおう)の迷(めい)へと送りけり

因(よ)って清浄なる心魂(こころだま)

今より是(これ)へ

舞戻(まいもど)れ

唵(オン) 輪廻転生(サンサーラ) 蘇婆詞(ソワカ)ッ!』


▼良哉:

あ゛…ア゛ぁあああああああああ゛!!!




(過去/回想)




△良充(少年):(たどたどしく)

『この者の執着(しゅうじゃく)を取り払い 罪過(ざいか)改め 清浄な…?』

えっと……


▼良哉(青年):

良充!もっと力を込めんか!

大昶(おおあきら)家の者として、そんなことでどうする!


△良充(少年):

ですが兄上…妖(あやかし)とはいえ、私は誰にも死んで欲しくないのです…。


▼良哉(青年):

いいか、良充。妖は本来ここにいてはならん存在。

我々のように力を持つ者は、力を持たぬ者たちをその脅威から守らねばならん。

…心優しいお前には酷なことかもしれぬが、私にはお前の力が必要なのだ。


△良充(少年):

兄上は、一人でも十分お強いではありませんか。


▼良哉(青年):

いいや、人は一人では弱い。

だからこそ皆で助け合わねば。お前は私の助けとなってくれ。

良いな?


△良充(少年):

はい…!

もっともっと力を付けて、必ずや、私が兄上をお助けします!



(過去回想終了)




▼良哉:(弱々しく)

…こんな、古い記憶を見せおって…

妖(あやかし)一匹倒すだけで、ぴーぴー泣いていた良充が…

今や大昶家(おおあきらけ)の当主、か…


☆和皐:(涙ぐみながら) 

良充様はいつも自慢しておられました…!

私の術は全て兄上に教えてもらったものだと。

兄上が私を強くしてくれたのだと…!


▼良哉:

ふ…教えた本人より上達しよって…ゲホゲホっ…


◆莉子:

身体が…崩れてきてる…


☆和皐:

ごめんなさい…っ!

良哉様のお心を取り戻すには、これしか方法が…っ


▼良哉:

なぜお前が泣くのだ…


☆和皐:

これは、違います…っ、

この涙は、良充様の涙です…っ


▼良哉:

良充に伝えるのだ……

涙は捨てよ。弱き者を守るため、さらに強くなれ、と…。


☆和皐:

うぅ…っぐす…はい、必ず…


▼良哉:

不甲斐ない兄、を…ゆ、る…し…


◆莉子:

消え、た…


☆和皐:

ふ、…あああ!良哉様ぁぁぁ!




(間)




◇大地:

これで、良かったのか?


☆和皐:

わからない…

でも、良充様に伝えなければ…良哉様の最期のお言葉を…。


◆莉子:

…っ!和皐ちゃん!なんか、身体が透けてないっ?!


☆和皐:

良充様の力を感じる…

そろそろ時間切れだ。元の時代に戻らねばならんようじゃ。


◇大地:

嵐みたいに現れて、嵐みたく消えてくんだな…。


☆和皐:

ありがとう二人とも。

時代と共に大昶家(おおあきらけ)の力が失われること、寂しくも思っていたが…

そんなものなくても、心の強さはしっかりと後世へ継承されている!

大地、これからもしっかりな!莉子も、大地を頼む。


◇大地:

こんなハチャメチャなご先祖様を持ってるんだから、

この先何があったって大丈夫だよ!


◆莉子:

和皐ちゃん、大地のことなら私に任せてっ!

何にも心配いらないからね!


◇大地:

元気でな!過去の人に言うのも、なんか変な感じだけどさ。


☆和皐:

ふふ。ありがとう。お主らも元気でな!



◆莉子:

行っちゃったね…。

それにしても大地すごかったね!何あのかっこいい呪文?みたいなやつ!


◇大地:

だろ~?えーっと…

ん?あれ?どうやってたっけか?一個を思い出せねぇ。


◆莉子:

この時代にはもう必要ないってことなのかな?


◇大地:

ん、そうなのかもな。

…で、それはそうと。ここ、どこだ?


◆莉子:

異空間が消えて戻ってこれたのはいいけど…

見事になんっにもないね。


◇大地:

まじかよ…。

ここは一体どこのクソ田舎なんだよぉぉぉぉぉ!!!




(場転)




△良充:

…かずさ、…和皐っ…!!


☆和皐:

ん…良充さま…ただいま戻りました。

良哉様は、最期にお心を取り戻してくださいました…っ

でも、でも…っ!


△良充:

あぁ…解っている。

ご苦労であった。これで、良かったのだ…


☆和皐:

ふっ…うぇぇぇん…


△良充:

辛いことを任せてしまってすまなかったな…

お前には心から感謝しよう。兄上もきっと、感謝しているはずだ。


☆和皐:

和皐だけの力ではありません…。

良充様の子孫は…大地は、とても芯の強いお人でした。

彼の力を引き出すつもりが、和皐の方が力を貰ってしまいました。


△良充:

そうか…。

我が遠き子孫は「大地」というのか。良き名だ…。


☆和皐:

良充様!…和皐はもっともっと修行を頑張ります!

良哉様の代わりにはなれませんが、それでも、良充様が寂しくないように…!

あたっ!(扇子で軽く叩かれる)


△良充:

誰が寂しそうだと?

でも、そうだな…お主には須(すべから)く期待しよう。

良いのか?

私が兄上に術を教わった時のようにお前にも厳しく修行を付けるぞ!


☆和皐:

はいっ!望むところですっ!

ですが良充様、今だけはお涙を流されてもいいのですよ…?



▼良哉:

(…涙は捨てよ。弱き者を守るため、さらに強くなれ…!)



△良充:

…兄上、分かっております。

陰陽師・大昶家(おおあきらけ)の当主として、

和皐や皆を導き、我が子孫・大地が生きる平和な時代に必ずや繋げてみせましょうぞ。


☆和皐:

では和皐は絶対に良充様よりも長生きしますっ!


△良充:

どうした?藪から棒に。


☆和皐:

だーかーらー!

良充様にもう二度と悲しいお顔をさせないために…

あだっ!(扇子で叩かれる)


△良充:

何が「だーかーらー!」だ!

どうやらお前には礼儀作法から叩き直さねばならんようだな?


☆和皐:

ひえ!お、お許しを~っ!


△良充:

ははは!



(間)



△良充:

『未来へと吹く風の精霊よ

彼(か)の者の浄化されし魂を

……どうか……

安寧(あんねい)の地へと運び給(たま)え。』





end.

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作者レイフロ

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